第一章◇幸福なる悩み◇

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  京離れ 恋女房と二人宿 なのに契れぬ 我が身恨めし 季語も無し 『…』 『ぐわぁあぁっっ』 龍馬は書いた詩を滅茶苦茶に丸め投げ捨て 文机に突っ伏し、筆も置かずに頭をかきむしった 確かにわしは怪我人じゃっ。だが、もう湯治にきて暫したつ…こうして字も書ける、出歩く事も出来るちゃ。順調に回復してるがっ。なのに何故?どういてあと一歩がっ!? トットットット… 階段を登ってくる軽快な足音 『龍馬さん?どしたの?』 襖から愛おしい顔が覗く 『ん・おぉ…零。いや…詩が上手く書けないき…ちく…と…な』 文机からつと顔を上げてみたら零の手には… 『詩ってこれ?お洗濯物干してたら窓から…』 『だっ!?いかんっ駄目じゃっ』 筆を投げ捨て零へ駆け寄り、丸まった紙を取り上げようとするが 『見せて下さいよ~♪』 ひょいっとかわされてしまう 悪戯っ娘ぽい表情でカサカサと広げようとする か・可愛いのぅ いやいや…今はそれ所じゃないぜよ 間に合わんっ… 『駄目じゃっこらっ…ぐぅうっっ』 『っ! 龍馬さんっ!?』 少し舌っ足らずな可愛い声 紙を放り出し、跪いたわしに さっと駆け寄る… わしの嘘をまことに信じ傷を伺う小さな手 しなやかな優しい指先は、さっきまで水仕事をしていたせいか少しばかり冷たく… わしの額を…首や肩を優しく撫でる 『……っっ』 うなじが逆立つような衝動の予感 思わず零の両の手を握りしめて動きを制した 『えっ?』 『…冷えちょるな…いつもありがとうな』 手の平に… 指先に… 手の甲に脇に… 『…っ……っっ』 零が小さく息を呑む 幾度も口づけをし…温もりが戻るように包む 指に再び口を這わせた時 …目が合いお互いの動きが止まる  image=386095489.jpg
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