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京離れ
恋女房と二人宿
なのに契れぬ
我が身恨めし
季語も無し
『…』
『ぐわぁあぁっっ』
龍馬は書いた詩を滅茶苦茶に丸め投げ捨て
文机に突っ伏し、筆も置かずに頭をかきむしった
確かにわしは怪我人じゃっ。だが、もう湯治にきて暫したつ…こうして字も書ける、出歩く事も出来るちゃ。順調に回復してるがっ。なのに何故?どういてあと一歩がっ!?
トットットット…
階段を登ってくる軽快な足音
『龍馬さん?どしたの?』
襖から愛おしい顔が覗く
『ん・おぉ…零。いや…詩が上手く書けないき…ちく…と…な』
文机からつと顔を上げてみたら零の手には…
『詩ってこれ?お洗濯物干してたら窓から…』
『だっ!?いかんっ駄目じゃっ』
筆を投げ捨て零へ駆け寄り、丸まった紙を取り上げようとするが
『見せて下さいよ~♪』
ひょいっとかわされてしまう
悪戯っ娘ぽい表情でカサカサと広げようとする
か・可愛いのぅ
いやいや…今はそれ所じゃないぜよ
間に合わんっ…
『駄目じゃっこらっ…ぐぅうっっ』
『っ! 龍馬さんっ!?』
少し舌っ足らずな可愛い声
紙を放り出し、跪いたわしに
さっと駆け寄る…
わしの嘘をまことに信じ傷を伺う小さな手
しなやかな優しい指先は、さっきまで水仕事をしていたせいか少しばかり冷たく…
わしの額を…首や肩を優しく撫でる
『……っっ』
うなじが逆立つような衝動の予感
思わず零の両の手を握りしめて動きを制した
『えっ?』
『…冷えちょるな…いつもありがとうな』
手の平に…
指先に…
手の甲に脇に…
『…っ……っっ』
零が小さく息を呑む
幾度も口づけをし…温もりが戻るように包む
指に再び口を這わせた時
…目が合いお互いの動きが止まる
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