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「ねぇ、写真撮って?」
彼女は言った。
はかなげな、その表情で。
「いいよ。何を撮ればいい?」
俺がそう言うと
彼女はニッコリと笑った。
「えっとね、アレと、
アレと、…あとアレ」
「わかった」
カシャッ
カシャッ
夢中でシャッタ-をきる。
角度を変えながら、
何枚も、何枚も。
しばらくして、
写真を撮り終えた俺は、
彼女に尋ねた。
「あとは、もうない?」
彼女は考え込む。
その沈黙がやけに怖くて。
ただひたすら
もういいよ、と言ってくれる
ことだけを祈っていた。
でも、神様というのは無情だ。
時に残酷すぎて
その存在を危ぶみたくなる。
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