出逢い

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僕は歩き出した。 彼女も後ろから着いてくる。 ちょっと振り返ると、彼女は足をブルブル振るわせて歩いていた。 「寒いですか…?」 「え?」 「寒い?」 彼女は首を振った。 「慣れてるので大丈夫です」 僕は頷いた。 細いから寒いんだろうな、きっと。 「気にしないで下さい。大丈夫」 彼女はまたニコォと笑った。 寒くて赤くなった頬。 …可愛いな。 僕は余り笑う方ではないのだけれど、真似してニコォと笑ってみた。 「ん、は!血!口から血が出てます」 彼女が僕を見て言った。 「あ、はは、大丈夫大丈夫」 …地味に唇が切れた。 柄にもないことをするもんじゃない。 また前に向き直って歩き出す。 数分は経っただろうか、彼女が僕の袖を引っ張ってきた。 僕はドキッとする。 「あ、あの、衛さんですか?」 僕は目を見開いた。 「え?」 なんで僕の名前を知っているんだ。 「川井……衛…?」 「…ああ、そうです」 彼女がまたニコォと笑った。 「やっと見つけた!」 彼女が僕に抱きつきてくる。 「おお…」 『おお…』なんて間抜けな声を出してしまった。 …情けない。 「学校もう大丈夫です。衛さん見つけたから大丈夫」 「え、どういう意味?」 僕はよく分からなすぎてちょっと笑ってしまった。 どういう意味だろうか。 僕を探していたのか? 「帰りにまた来ます」 彼女はそう言うと、歩いてきた道をゆっくり戻って行った。 …分からない。近頃の女子高生はみんなああなのか。 って、僕も高校生だったな。 雪の中、ぽつり寂しくなったのでなんとなく咳払いをして、学校へ向かった。
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