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授業中も彼女のことが気になって仕方なかった。
彼女は僕のことを知っている。
でも僕は彼女を知らない。
知らないと思っているだけで、
どこかで会っていた?
…どこで?
「おい、川井、次、体育館だぜ?」
幼馴染みの中山が声を掛けてきて、びっくりした。
「あ、うん」
「どうしたんだよ?」
「あー…なんでもない」
気付けば、下校の時間になってしまった。
彼女は『また帰りに来ます』と言っていたな。
それはどういう意味だろうか。
僕は校門を出た。
寒くてぐるぐるに巻いたマフラーを少し上げる。
いつも痛くなる鼻を隠したかった。
「衛さーん」
…ん。女の子の声。
僕は顔を上げた。
目が悪いんで、目を細める。
「衛さん!」
「…あ」
彼女だ。
"迎えに来る"…と言う意味だったのか。
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