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「うん、居たよ」
「ごめん、僕、全然覚えてなくて……」
「良いの。それでも良いんだ」
「ごめん」
「…あのね、衛さん」
彼女が僕を見つめる。
「…うん」
僕は何だか、緊張していた。
「……あたし、衛さんのこと、好き」
そう、小さい声で言った。
…す、き。
「……え?」
僕が目を見開いて彼女を見つめていると、彼女はクスッと笑った。
「嘘でーす」
そう言うと、また笑った。
「ああー…ははは、だよねー。こんなやつないよねー」
…おおー、驚いた。
告白なんて今まで一度もされたことがなかった。
しかもこんな可愛い子に。
「入ろ!」
彼女は僕の手を引いて、秘密基地へ入る。
僕は、ドキドキしていた。
「どう?」
彼女がキラキラした緑のような黄色のような不思議な色の瞳で僕の顔を覗き込んでくるもんだから困ったけれど、平常心ぶる。
「…んん、全然変わってない」
何もかも一緒だ。
僕が好きだったゴジレンジャー(当時流行っていた戦隊もの)のフィギュアまでまだ置いてある。
だけど、何かが足りない。
「ここに、猫の写真が置いてあったような…」
…そうだ。
僕ら三人で飼ってた猫。
ここで飼ってたな。
「…ああ、あれ、なくしちゃったの」
彼女は寂しそうな顔をしていたのに、僕は気付かなかった。
「…そうだよね、無くなるのも無理はないよ」
僕はそう言いながら、ゴジレンジャーのフィギュアを手に取り、眺めていた。
「衛さん、変わったね」
僕はやっと、彼女の方を見た。
端に丸まり、座っている。
暗くて、彼女の顔が泣き顔になっていることに気付かなかった。
「そうかな?」
「うん」
「なんか、ごめん」
彼女は首をフルフルと振った。
「すぐ謝るのは変わってない」
「はは、よく言われる。昔からそうだよなーって。謝んなくていいとこでもずっとごめんって言ってて」
それでよくいじめられてたな、僕は。
そのあと、彼女が何か言っていたけど救急車が通ってよく聞こえなかった。
「ん?ごめん、聞こえなかった」
「また謝った」
「今のは謝るべき時です」
彼女はニコッと笑うと、僕を引き寄せた。
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