奴隷

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入学式が終わって。 普通の授業が始まるようになって。 少しずつ学校にも慣れてきた頃。 あたしは学校のトイレで自慰行為をした。 人より性欲強いみたいで、気持ちいいことがやめられなくて。 放課後の、人の声はするけど、密室空間。 声を押し殺して、満足するまで自分の体を弄ぶ。 誰かに見つかるかもしれない少しのスリルが、あたしの興奮を更に高めてくれる。 不意にあたしの入っているトイレの個室がノックされて。 あたしはびくっとして、その行為をやめる。 まさか、ノックされることがあるなんて思っていなくて。 どうしようって思いながら、息を潜めてノックを返す。 入ってますよって、それのつもりだった。 だけど、またノックされて。 あたしは乱れた服を整えて、そーっとトイレのドアを開ける。 そこに立っていたのが安積くんだ。 井上和沙、安積くんのことは隣の席だから、入学したばかりでも嫌でも記憶があって。 隣の席の、ちょっとかっこいい男の子って思っていた。 それが女子トイレに堂々と入ってくる変態だ。 あたしは悲鳴をあげようとして、腕を捕まれて。 「おまえ、今、何してた?」 なんて、ニヤついた、わかりきったような顔で聞かれて、今度は顔面蒼白。 「なっ、何もしてませんっ」 あたしはそう言ってごまかしたけど、あたしの体はトイレの壁に押しつけられて。 このまま犯されちゃうんじゃないかっていう…、なんというか、期待をしてしまったのだ。 されたい。 そう思う性欲。 「オナっていたくせに。このスケベ女」 言われて、罵られて、あたしの中、何かがきゅうっと込み上げてくる。 あたしの唇、震えて。 声も出せなくて。 ただ胸がドキドキして。 あたしの眼鏡、少しずらされて。 安積くんはあたしの顔をじーっと見てくる。 ぼやけた視界の安積くんをあたしは見ていた。 「……やらねぇよ。おまえは今日から俺の奴隷だ。学校中に言いふらされたくなければ、言うこと聞けよ」 って…、そう…言われて。 期待は見事にはずされた。 それもわかっていての意地悪のような気がする。
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