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「散らかってて…、適当に座って?あ、コーヒーでいいかな。」
明日香は俺と目を会わせてくれないまま、いそいそと部屋に入り、キッチンにたった。
靴を脱ぎながら、部屋に点在する段ボールを見て、本当に引っ越すんだと、胸が締め付けられるような気がした。
「…お邪魔、します。」
「…うん。」
ちらっと、こっちを身やりちょっとだけ笑う明日香。
今すぐ抱き締めたい衝動に刈られて、俺は落ち着こうとそっと息を吐き出した。
ほとんど荷物の片付けられた部屋のすみに座り、ぼんやりと作業をする明日香の後ろ姿を見つめる。
会えた…
部屋にいれてもらえたのは、想定外だったが…。
何から話せばいいんだろう。
俺は明日香から視線をはずし、ポケットにいれたままの合鍵をそっと握った。
「はい、ブラックでよかったよね?」
不意に目の前にカップが差し出されて、俺はハッと我にかえった。
「…ごめん、ありがと。」
俺はカップを受け取り、一口コーヒーを啜った。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が続く。
ホンの数秒のことだろうが俺にはなん十分にも何時間にも感じた。
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