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「「あの、……あ。」」
その沈黙を破るように、胃を決して発した言葉がタイミングよくぶつかり合い、お互いまた口をつぐんでしまった。
「………」
ちらりと明日香を盗み見ると、居心地が悪そうにカップにはいったままのスプーンを弄び、何をはなそうか考えあぐねている。
そう、初めてであった、あの日のように。
俺はその表情を見て、思わず小さく笑ってしまった。
「え、なんで笑うの。」
「いや、ごめん。初めて店であったときも、そうやって困ったような顔…してたと思って…。」
「そんなこと…、」
「あったよ。」
「そうだっけ。」
「そうだった。」
あんな別れかたをしたのに。
今日なんか俺が無理やり押し掛けたのに。
俺たちは不思議と他愛もない話をしながら、二人で過ごした日々をただ振り返った。
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