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「……結婚しようって、プロポーズをした人がいた。」
少し、ぎこちない空気が紛れた頃。
俺はコーヒーを一口飲んでから、ポツリと呟いた。
「……みき、さん?」
明日香の問いに、俺は小さく頷いて明日香を見た。
「……愛してた。心から。絶対幸せにしようと思った。あいつの幸せのためなら、なんだって出来た。…だけど。」
「……うん、」
「…俺たちの関係は、全部ウソだった。」
「…うそ?」
明日香を見ると、瞳が揺らいでいた。
過去の女の話なんて、聞きたくないだろう。
それでも、明日香を好きだと言う前にどうしても話したかった。
「…………」
明日香は、小さく笑みを浮かべて頷いたあとカップをテーブルにおいて、座り直した。
俺はそれが合図なのだと、話を続けた。
「婚約指輪、渡して……それから…数日してから、突然あいつは俺の前から姿を消した。………俺の可愛がってた後輩と一緒に。」
浮気されてた…。
いや、あれは俺が浮気相手のほうだったんだと悟ったのは、後輩から結婚式の招待状が届いてからだ。
「…なお、ちゃん。」
「…ショックだった。誰も信じられなくなるくらい。そんなときだよ、先輩に連れられて、あの店に入ったのは。」
俺はちょっと、自嘲の笑みを浮かべて明日香をチラッと見やった。
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