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ようやく、お互い気持ちが落ち着いて、顔を上げる。
俺はちょっと笑って明日香の目元もぬぐってやる。
「ぐしゃぐしゃだな。」
「…尚ちゃんこそ。」
そういって笑う明日香の顔に俺は胸が高鳴るのを感じた。
「…、あ!」
たまらず、床に明日香の体を押し倒す。
「…まって、」
「無理。」
そういって耳たぶに甘く噛み付くと、明日香が首をすくめた。
「や、くすぐったい。」
「…いやか?」
「やじゃない、けど…、だめなの…っ」
「…なんで?いやじゃないんだろ?」
軽い抵抗を見せる明日香にかまわず、俺は首筋や頬に口付ける。
「ほんとに、だめなの…、ぁ、…安定するまでは…だめ…っ!」
俺はその言葉に、ガバっと顔を上げた。
「…今、何つった?」
「…安定するまで。」
かぁぁぁと明日香の頬が染まる。
俺は明日香を起こしてやりその顔を覗き込んだ。
明日香はちょっと俺から目をそらし、一冊の手帳を差し出す。
「実家に帰ろうと思った理由は、これ。これがなかったら一人でここで生活しててもよかったんだけど…。」
「…いつ、わかったんだ」
「尚ちゃんの家を飛び出して、すぐ…。」
俺は恐る恐る明日香の腹部に手を沿わせた。
明日香はまた泣きそうな笑顔になりながら、それを受け入れる。
「最後に会えてよかったと思ってた。だまっとくつもりだったし…なのに、尚ちゃんプロポーズなんてするんだもん。」
腹部を触る俺の手に明日香の手が重なる。
「…尚ちゃん、」
「ん?」
「……ふつつかものですが、末永くよろしくお願いします。」
不覚にも、また泣きそうになるのをこらえて、俺は微笑んだ。
「ぜったい、もう離さないからな。」
「ぅん…」
ほころぶ唇に、俺は誓うように口づけた。
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