幸の螺旋

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俺は素直に恋人が好きになった。 いつのまにかハマっていたんだ。 人がこんなにも温かいなんて、知る由も無いよな。 ただ1つ問題があった。 恋人の方が俺より重症なのだ。 四人とも性格が全く異なるため、まるで別人と過ごしている感覚に陥る。 俺が嫌いな人格もいるし俺を嫌いな人格もいる。 そういうときは引っ込む。 最初はその場凌ぎだった。 いつしか悩みに変わっていた。 答えは直ぐに出た。 逃げてもダメだ。 自分達も四人になれれば…… ちゃんと向き合わなければ… 悩めば悩むほど自分が見えなくなっていく。四人になるのに時間はかからなかった。 初めは慣れない。 何せ半分の半分だ、勝手が利かない。 心がバラバラなんだ。 すぐ気分が悪くなる。 でも効果はあった。 俺達はそれぞれ彼女達を好きになった。 勿論、向こうも。 もどかしさが消えた。 彼女も落ち着いた。 そして俺は幸を得た。 誰にも知られることの無い八本の螺旋はきっとこれからもほどける事はないだろう。
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