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朝、家を出たところで、ちょうど家を出てくる圭介に出会った。
圭介の家は、私の家の斜め前だからこういうことはよくあるのだが、目が会うとお互いなんとなく、気まずいムードが漂う。
あれは1年生のとき、家の近くで同級生の女の子が痴漢にあった。
私の親が心配して、圭介の親にしばらく私と圭介を一緒に登校させるように頼みに行ったことがあった。
そのとき、お互い本意じゃなかったけど、しばらく一緒に登校していたことがあった。
徐々にその習慣は薄れていったけど、たまたま一緒になったときだけなんとなく一緒に登校するのはその名残だ。
歩き出した圭介に、少し離れて私が続く。
小学生の頃は、同じくらいだった身長も今では見上げるくらいに大きい。
白かった肌が焼けて黒くなっているのは、やはりバスケ部に入ったせいだろう。
「バスケ部入ったっちゃろ?」
「え? うん」
「今日は朝錬ないと?」
「月曜やけん」
「楽しい?」
「べつに」
「やめんと?」
「……なんでやめないかんと」
その怒った声に、ちょっとびっくりした。圭介は、本気でキレたみたいだった。
そんなに怒らなくったって……と口の中で、ぶつぶつ言っている内に、大通りに出た。
一緒に登校するのは、ここまでなのが暗黙の了解だった。他の生徒もいる大通りに出たらなんとなく別々に行く。
お役御免とばかりに、どんどん先に言ってしまう圭介の背中がなんだか憎らしかった。
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