嫌な始まり

2/5
前へ
/24ページ
次へ
「おかえりなさいませ御主人様。」 はぁ……? 後ろの席から作られた声が聞こえた。 幻聴であることを心から願う。 「すげぇ…攻略二日目にしてもうここまで…」 後ろからまた違う声。 声だけでもどんな奴か想像出来る。 まさにオタクって感じのやつなんだろうな… そんな声が三人ほど… 後ろで何が起こっているのかだんだん分かってきた。 「ユキたんカワユス…」息が荒れている。 きめぇ… この状況で最優先すべきことは何か。 考える。 それは俺にストレスを与えないこと。 そして、それを実現するために必要な行動は何か。 考える。 それは今手に持っている烏龍茶入りの蓋を閉めていないペットボトルを俺の頭を越して後ろに傾けること。 そして、それは本当にしても良いか。 考える。 善ではないが俺の健康を守るという正当な理由がある。 三度の思考をして答えに辿り着いた。 思考時間は約三秒。 そして、実行。 出来る限り奴らに烏龍茶が降り注がれるように勢いをつける。 発射。 「うわぁっ…」 「ぼ、僕のPS○が!!」 「ユキたーん!!」 はっ…ざまぁ それにしてもキモい… 特に最後の奴。 明日から夏休み。 当分、奴らの存在を感じないで済むと思うと笑みがこぼれる。 担任が教室に入って話をしたり、プリントを配分したり。 ノルマをこなしていく。 そしてやっと帰宅出来る。 足早に教室を出て駐輪場へと足を運ぶ。 歩きながら自転車の鍵を手に持つ。 自転車に乗り、誰よりも早く学校を後にする。 家までは最短の道で行く。 約15分。 自転車を停めて、家の戸を開く。 鍵が掛かっている… 忘れていた…昨日から両親は海外に行っているんだった。 鞄から鍵を取り出し、それを使い、戸を開く。 「ただいま…」小さく呟く。 「おかえりなさいませ、おにぃちゃん♪」 はぁ……?
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加