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『お伽話、と言うものは勿論知っておるな?』
「あぁ。小さい頃からよく聞かされる作り話だろ?」
『あぁ。…儂らの戦いは現在、その御伽噺としてしか、この世界に爪痕を残しておらん』
「ちょ、ちょっと待て。さっき俺も言ったろ?御伽噺ってのは昔の人の作り話。だけどお前らのその戦いって、現実にあったんじゃないのか?じゃなきゃ、そもそもスティグマなんてこの世に存在―――」
『本にお主はせっかちじゃなぁ。話は最後まで聞いておれ』
ソルヴィの呆れる笑いがまた響く。
レンは煮え切らない気分で眉をひそめると、腕を組んだ。
「分かったよ…。とりあえず話してくれ。その後で気になったことは質問する。」
『うむ…。少し長くなるかもしれんが…』
「出来るだけ手短にな。」
『ふふ、善処しよう』
レンは瞼を閉じて、ソルヴィの話に集中した。
『御伽噺として存在する儂らの戦い。…文字通り世界の崩壊に立ち向かった、英雄たちの話じゃ』
ソルヴィから告げられるスティグマの本質。
御伽噺として消えかけた英雄たちの物語。
それを話すソルヴィの声は、どこか儚げだった…
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