新しい生活~お伽話~

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『時で言えばおよそ千七百年前じゃ。…今も記憶に残るこの世界は、少々争いごとが絶えない世の中じゃった』 「争いごと…?」 『領地、宗教、人種…。様々な理由で戦争が頻発しておったんじゃ』 「とんだ戦国時代だな。」 『ハハハ。じゃがな、争いごとが絶えないというても、一般人に貧しい生活を強制させるほどの規模の戦争は無かった。…良くも悪くも、人々が活気づいておったいい時代じゃった』 「それ、結構思い出補正がかかってないか?」 『いちいち口を挟むでないっ』 どこか叱り口調のソルヴィの声に、レンはほくそ笑みながら肩をすくめる。 『当時の儂は、若輩者であったがギルドを構えておった。…前にも話したが、紫金の騎士とかいう称号まで貰ってのぉ、それはそれはかなりの人気者じゃった』 (言った傍から思い出フィルターかかってるし) 『お主、聞こえておるからな?』 「さぁて、話を続けてくれ。」 レンは取り繕った咳払いをし、話を促した。 ソルヴィのため息が聞こえ、自然と頬が緩む。 『ギルドと言っても、当時は傭兵集団という認識の方が近かったの。民からの依頼もあったが、ほとんどは他国同士の戦争に引っ張られておった。その時にはよく、現在スティグマを受け継いだ他の六人と、顔を合わせては戦い三昧じゃったな』 「他の六人か…。確か一人はアグレとか言って…。」 『うむ。アグレは特殊部隊出身での。傭兵という儂らとは違って、使える主君みたいなものがおった。ほかの面々も、ギルドの長であったり、騎士団の団長であったり様々じゃった。…まぁ他の六人のことはのちのち話すとしよう』 レンは聞きながら頭の中で整理し、ソルヴィは懐かしい記憶を掘り起こして、感慨深くなっているようだった。 『始まりは、ちょっとした異変じゃった。今思い出しても、特に気に留めるような特別な出来事ではなかった。…ある時、ギルドの方に依頼が来たんじゃ。いつも懇意にしてくれる国からの依頼で、内容は『指定地域の魔物の有無を調査してくれ』と言った、おつかい程度の依頼じゃ。なんでも、外に出て行った商農業者が一向に帰ってこないとのこと。国の師団から人数を割いて調査に向かわせても、その調査隊すら音信不通になったらしい』 「…」
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