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「オイオイ。いくら相手が新種って言っても、戦争を戦い抜く奴らが手も足も出ないって…。」
『それほどにデタラメじゃった。…奴は徐々に活動範囲を広げ、土地を枯らし、生物たちを死に至らしめる。文字通り、世界を徐々に黒く塗りつぶして行ったんじゃ』
「…」ゴクッ
無意識のうちに唾を飲み込んだ。
ふと世界が黒く侵食されていくさまを想像し、寒気がした。
『奴は姿ある災厄じゃ。…コアとなっている奴本体は黒い靄で覆われ、悪魔のようなシルエットじゃった。黒く侵食した大地から分身を無数に出現させ、人々を地へと引きずり込む。……今思い出しても寒気がする。まさにあれは、地獄の一ページじゃ』
「そ、それで、どうなったんだ?」
『アブソーバーの侵食は日を追うごとに加速していった。流石に無視できない事態になり、各国嫌々ながらも連合を結成。儂らギルドもその傘下に入ることになった。…時間にして約三日。…たった三日じゃぞ?それだけで、連合の戦力は六割にまで減らされた』
「お、おいちょっと待て!各国の連合軍なんだろ?それって文字通り、世界の戦力が六割にまで減らされたってことだよな?」
『あぁ…。まさに、世界の危機じゃ。……このまま悪戯に戦力を減らされるくらいなら、いっそのこと犠牲覚悟の賭けをしようと考えたのじゃ』
「…」
『ギルドや騎士団からトップクラスの魔導士を引き抜き、無傷で本体の場所まで届ける。…つまり、その引き抜かれた魔導師たちに、世界の命運が託されたのじゃ』
「無傷って…。じゃ、じゃあ、道中は…。」
『…言ったじゃろ?犠牲覚悟の賭けじゃ…。儂たちを奴のもとへ届けるために、幾千幾万の同胞が死んでいった』
話の流れから、引き抜かれたのは恐らく、今スティグマを受け継いでいる七人なんだろう。
だが、その七名をアブソーバーとかいう化物のもとへたどり着かさせるため、犠牲になった数は……
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