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「なぁ、フェルト…。」
「な、なに?…って、あれ?呼び捨て?」
ディオに呼ばれ、フェルトはどぎまぎしながら返事する。
「自分の名前言ってみ?」
「え?…フェルト、だけど…。」
「ちゃう!!ワイの名前言ってみぃって言ったんや!!」
うぅむ、これは言葉の表現に問題があるな…
フェルトは引きつる笑顔を必死に保っていた。
「え、えっと…。」
「考えんとわからんのか?」
「ち、違うってば!ちょっと驚いただけで―――!!」
「はは…。せやな、自分は変な訛りも混じっとるし、目は細いし、田舎じみとるし…。そんなワイはキツネなんぞで十分なんやろなぁ。」
徐々に、ディオの背中から負のオーラーが吹き出し始める。
レンとフェルトはオロオロしながら、「(早く謝りなさいよ!)」「(なんで俺だけなんだよ!?お前も一緒に謝れって!!)」と、どちらが先に謝るか言い争う。
そんな二人を置いて、静観していたロッティがディオの前に歩み出た。
((ろ、ロッティが行ったぁあ!!))
普段マイペースなロッティでも、ここはディオを励まし…
「あげる…。」
「?……なんやこれ?」
「油揚げ…。」
「……」チーン…
((オーバーキルしてどうすんだぁあ!!))
しかし、ディオに油揚げを差し出したロッティは至って真剣な顔・無表情だ。
無垢な追撃。
(と言うか、なんで今油揚げなんて持ってんだよ…)
そこはロッティくおりてぃ…
しかし数分後…
「チクショウ!!テメェがあんな所で駄々こねるから!!」
「ハァ!?なんでワイの所為になっとんのや!?お前らが自分のこと虐めるからやろが!!」
「元凶はテメェの顔だろうが!!このキツネェエ!!」
「ひどっ!?ってかまた言うたな!今度ばかりはワイも怒るぞコラ!!」
現在レンたちは、学園に続く大通りを爆走中。
ディオが寮前で意気消沈しているうちに時間は進み、朝のホームルームまで残り三分になっていた。
「あぁ~もぉ!なんで私まで付き合わされちゃってるのよ!!遅刻したらアンタたちの所為だからね!!」
「ミオ先生……怒ったら、絶対怖い…。」
走りながら啀み合うレンとディオ。
その少し後ろを、ロッティの手を引きながら走るフェルト。
走りながらお互いを罵り合うという無駄なことに体力を使う二人に、フェルトは内心ため息を吐く。
「あぁ~くそっ!とかく、さっさ足動かせアホンダラァアア!!」
「初日から遅刻なんて洒落になんねぇぞ!!」
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