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「(…?……そう言えばお前、あんだけ走った割には余裕そうやな?)」
朝からなんの準備運動もなしにあれだけ走ったのだ。
ディオでさえこんなに疲れているのに、既にレンは息を整えて欠伸まで零している。
「(ん?…言うほど疲れたか?)」
距離にしたら、大体六百メートルちょいといった感じだろう。
靴を脱いだりしたから、それなりにタイムロスはあるだろうが…
「(どんだけ体力あんねん、お前。自分はともかく、あっちの二人見てみぃ。ロッティなんか、さっきから眠ったように頭机につけとるで)」
「(体力、か…)」
そう言えば、先日気になることを言われた。
制服の採寸を測りに行った時、ミラスに言われた言葉。
地球にいた頃より、体全体の筋肉量が多くなっている。
と言っても、今はまだ中学の陸上時代ほどの筋力しかないが…
(体の調子もなんとなくいいし…。これも、魔素っていうモノのおかげなのか?)
もしそうなら、どれだけ万能物質なんだよ、この魔素って…
「おい…!おい!!聞いているのか?レン!!」
「はぇ?」
と、そこまで考えていると、突然自分を呼んでいる声に気づき、視線を上げた。
そこには、自分を見下ろすミオが…
「あの…ミオ先生…?」
「なんだ?」
「な、なんでその、綺麗な手を握り締め、不敵なほほ笑みを浮かべてらっしゃるのでしょうか?」
うん、自分でもなんでだろうと思う…
こんな本能的に敬語になったのは初めてだ…
「ほぉ?理由を聞きたいと?…では聞こうか。私が話している間、君は何を考えていた?私が教壇から再三呼びかけたのにも関わらず、君はそれを尽く無視したな?」
「……す、すみません!ちょっと考え事をして―――!!」
そう言ってデコを机につけて謝るレンだが、ゴンッという音が脳に響き、後頭部と額に軽い衝撃が走る。
「イッツゥ~~……。」
それほど力は込められてなかったが、痛いものは痛い。
後頭部と額をさするレンに、クラスメイトたちから失笑が溢れる。
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