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「待ちなさい!!」
しかし、そんな不審者の後ろには、黒いゲートのようなものが現れていた。
グレイヴも、こちらの世界に来るときに通った時空トンネル。
逃亡を図っている不審者に対して、グレイヴは声と共に氷解を飛ばす。
ガキンッ!!
しかし、あの時のように鎖で絡め取られると、粉々に砕け散った。
「…」
男は左腕を庇うように歩き、時空トンネルの前まで行くと、数秒蓮とグレイヴを睨んだ後、トンネルの中へと姿を消した。
「チィ…。何も情報を聞き出すことが…。」
グレイヴは歯がゆそうに眉間にシワを寄せていた。
だが、蓮が吐いた溜息に、視線をそちらに向かわせた。
「これから、どうするおつもりですか?」
「…」
グレイヴの問いに、蓮は視線を伏せる。
そして、先程よりも抑揚がなくなった声で、喋り始めた。
「どの道、選択肢は有ってないようなものじゃ。…儂がこの体で術を行使してしまった今、この体を抜け出すことが出来なくなってしまったしの…。」
「抜け出す?…じゃあ、アナタがその子の体から出る方法はあるんですね?」
「正確には、あった…じゃ。…お主が不甲斐ないばかりに、儂がこの体で戦ってしまってその方法すら使えなくなったのじゃ。」
「う゛…。」
"不甲斐ない"を強調する蓮に、グレイヴは声を漏らした。
蓮は頬を掻くと、「しょうがないの」と力なく零して、グレイヴを見上げる。
「儂はしばし、この体の主と話してくる。…それに、ちと騒ぎ過ぎた。誰かがここに来る前に、この体を人目のつかん所に移動してくれ。」
「え?」
そう言った途端、蓮は横に倒れた。
慌てて抱き起こすグレイヴだが、静かに息をしていることに気づいて、ひとまず安堵する。
しかし…
(話してくる…とは、一体…)
グレイヴは考えたが、とりあえず蓮をおぶって場所を移動し始めた。
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