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これ…なんの匂いだっけ…?
真っ暗な世界で、蓮は鼻腔をくすぐる匂いに、どこか覚えがあった。
瞼が重いな…
目を開けて確かめようとしても、寝起き以上の気だるさから視界に光を入れることができない。
「…ふむ。いつまで寝ておる気じゃ?主よ。」
そんな蓮の耳に、初めて聞く声が届いた。
女性の声だ。
それを認識すると、徐々に体の感覚が戻ってきた。
体を支配していた気だるさも消え失せて、ゆっくり瞼を開けることが出来るようになる。
「…え?」
しかし、そんな蓮の視界に入ったのは、見知らぬ女性の顔だった。
しかも、結構な美人。
蓮は表情を引きつらせて、その女性を見ていた。
「ようやくお目覚めか?…ふふ。何を呆けておる。頬が緩みきっておるぞ?」
そういった女性は、引き釣らせている蓮の頬を軽くつねる。
そこでようやく、蓮の思考も覚醒し始めた。
改めて自分の体勢を確かめる。
自分にかかる重力から、横になっているのは分かった。
後頭部には何やら柔らかい感触が有り、自分を見下ろすように女性が……
「アウトォォォオオオ!!///」
「ぬぉっ!?」
蓮は瞬時に起き上がり、顔を真っ赤にして前方にダイブ。
(ひ、ひざ、ひざまく…!!あ、あんな美人に…!!///)
ズザーっとスライディングを決めると、視界いっぱいに薄紫色の綺麗な花々が広がる。
その時、先ほど懐かしみを覚えた匂いが、花の匂いだったと気づいた。
「な、なんじゃなんじゃ!?と、とにかく落ち着くんじゃ、主よ!!」
一方、突然飛び上がった蓮に驚いた女性は、目を見開いて蓮を宥めようとオロオロしている。
艶があり、腰まである金髪。
ツリ目がちの目付きに、濃い緑色の瞳。
目つきも相まって、凛々しい雰囲気が漂う女性だ。
花が咲いた緑色の草原に、裸足で白色のワンピースと、どこか神秘的な装い。
「こ、ここどこだ!?さっきまで、確か…。」
「だから落ち着けと言っておろうに…。ふふ、まったく…。」
オロオロしている蓮を見ていた女性は、ふっと微笑み、安心したように脱力した。
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