17273人が本棚に入れています
本棚に追加
/856ページ
公園を抜ける頃には、夕日も太陽も一日の役目を終えて顔を隠していた。
蓮は公園の遊具などを眺め、小さい頃友人たちと一緒に遊んでいた記憶を思い起こしている。
今でも付き合いがある友人は数える程しかない。
小学校から帰るときは、ここで遊んでからよく帰ったもんだ。
子供らしく鬼ごっこをしたり、カードゲームにはまったりして、砂埃だらけで家に帰り、母が笑って出迎えてくれたりしていた。
(今になったら、何が面白かったのか良く分からないな)
当時のことを思い出し、失笑する蓮。
あの頃に比べたら、自分の平凡さについ笑ってしまう。
いつの間にか心が成長し、恥ずかしさを覚え、人前に出ることにためらいを持つようになる。
子供の頃は、そんな事微塵も考えなかったが…
蓮は懐かしさを覚えながら、公園を抜けた。
「うわ、蜘蛛の巣!?…はぁ~。身長が高くなると、こういう苦労もあるのか…。」
林道に差し掛かった直後、顔面に蜘蛛の巣がヒット。
暗闇の中、突然襲われた不快感に、蓮は情けない声を上げながら蜘蛛の巣を剥がす。
「く、蜘蛛は…いない…よな?」
小さい頃から、蜘蛛だけはどうも苦手だ。
小さいやつから大きいやつまでなんでもありのあの生物。
手の平サイズの蜘蛛なんて、見た瞬間声を上げることなく固まれる自信がある。
しかし、こんな所で固まってたら、わざわざこの道を選んだ意味がない。
(くそ!!ここで止まってたら近道した意味ねぇじゃんか!!)
蓮は腕を顔の前に持ち上げて走り始める。
草や枯葉を踏みしめて走る蓮。
葉が擦れる音を聞きながら、蓮は足を動かしていた。
最初のコメントを投稿しよう!