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「そうですか…。梅さん、柊さんは?」
「あいつも仕事だよ。クリスマスもね。
ま、わたしらも忙しいからさ。それでいいけど。」
「そうですか…。」
寂しいそうな顔をする松。
なんでお前がそんな顔すんだよ。
「やっぱり、ダメですよ梅さん!点灯式、行ってください!」
「はぁ!?なんで…。」
「いいから行ってください!行くべきです!梅さん、きっと心が洗われますよ。
あのクリスマスツリー、不思議な力があるんです。」
松のヤツ。男のクセにクリスマスツリーで心洗われてんじゃねぇよ。
ま、そんなに進めるんなら行ってきてもいいかな。
「わかったよ。ちょっくら行ってくるわ。仕込み、ミスんじゃないよ!」
「はいっ!」
わたしは松を残して、コートを着込み、店の裏から外に出た。
うわー、すごい人混み。
もうすぐ始まる点灯式を一目見ようと、沢山の人が会場につめかけていた。
やっぱりほとんどカップルじゃねぇか。
わたしはコートのポケットに手を突っ込んだまま、高くそびえ立つツリーを見上げた。
灰色の空。
指先が凍るくらいの寒さ。
雪…降るかな。
「楽しみやなぁ!楓!」
「うんうん!こんな近くで見れるなんてラッキーだよね!」
大声で話すカップル。
あ、さっきのダブルデートの大学生じゃないか。
「寒いね、大丈夫?柳くん。」
「あ、う、うんっ。平気だよ。」
「はは!ジミーなら心配いらんて桜!地味なだけに…。」
「ちょ、椿!調子乗りすぎ!」
楓に柳に桜に椿…。
ぷっ。
全員、木じゃん。
おっかしいの。
って………梅も木だった。
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