1、『今日ぐらい会いたいかも』

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恋人たちが見守る中心にクリスマスツリー。 そして雪が降りそうなくらいの寒さ。 松の言った通りだ。 「こーゆーの悪くないよね。」 気がつくと、ぽつりと独り言を言っていた。 これで…さ、あいつが隣にいたら最高なんだけどな。 バカな。 何考えてんだ、わたしは。 楽しめるクリスマスなんて…わたしにはないの。 わかってるのに、未練たらしい。 わたしがたぶん一番好きな人。 それが、柊。 その事実だけでも幸せじゃん。 このまま付き合うなんてことなくても、今が幸せだからそれでいい。 彼女になんてなったら、柊はきっと失望する。 柊は好きそうだもん、クリスマス。 ごめん、彼女になってもクリスマスは一緒に過ごせない。 クリスマスは…大事なの。 仕事だけじゃない。 わたしの思いがあるから。 そんなことを考えてると、目に涙が浮かんでいた。 ああ…バカみたい…。 わたしがさ。 思った以上に目頭が熱くなって、ぐっと涙をこらえた。 泣くな。 泣くな…。 そして始まる点灯のカウントダウン。 ああ、きっとこのままだとわたしは涙がこぼれてしまう。 だから『0』の皆のかけ声とともに目をつぶった。
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