第一章「転落」

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第一章「転落」

古びた洋館の二階。 その一室に女が一人でいた。 部屋の中央にロープがかけられ、その先は、輪のようになっていた。 このロープは首を吊るためのものである。 「私はあなたの障害になるぐらいでしたら潔く死を選びます」 そう呟いた女は、目の前にあるロープに手をかけようとしていた。 目の前には大きな窓があり、その奥は嵐のように朱や黄の葉が舞っていた。 時は昭和初期。 軍部が台頭し、国の在り方が変わろうとしていた。 激動の時代において、政治に翻弄される人物が多いのはいつの世も同じである。
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