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ここにも翻弄される人物がいた。
その名を城島春江(じょうじまはるえ)という。
春江は首を吊るため、踏み台として小型の椅子に乗り、ロープを両手で握った。
そしていよいよ首にかけようとした時、輪になったロープの奥に吹雪のように舞っている葉が
目に映った。
その瞬間、春江の胸に何とも言えない気持ちがこみ上げてきた。
――そうだ……あの時もそうだった……庄次郎様
幸せだったあの頃を、愛しい庄次郎との宝石箱のような思い出を、命を絶つ瞬間に思い出す。
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