第一章「転落」

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湖の縁で朱に染まった葉を拾いながら佇む春江に庄次郎は呟いた。 庄次郎は軍人である。 軍人は国を守るために戦うだけではない。 国を自分の理想に近づけるための政治的な駆け引きが、当たり前に行われる。 その駆け引きの中にクーデターなどの武力によるものもあった。 そんな政治闘争に庄次郎も巻き込まれていた。 そのことを庄次郎から聞かずとも春江は察していた。 心優しい庄次郎が、軍人として精一杯国を守ろうとしている。 庄次郎の瞳の奥に優しさと確固たる覚悟を垣間見た。
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