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「春江さん……また一緒にここへ来ていただけますか?」
「はい。喜んで」
春江はゆっくり微笑んで、自然と言葉が出た。
春江は、男性からの誘いを未だかつて受け入れたことがなかった。
しかし、庄次郎の優しさに惹かれていったのである。
そして優しいからこそ、この過酷な世界を生きていくことが庄次郎にとって困難なのではないかと感じていた。
しかし、逃げることなく自分の使命を全うしようとする姿を見て、自分が支えていきたい。
寄り添っていきたいと素直に思えたのである。
この静かながらも熱い気持ちを、春江自身、不思議な気持ちで見つめていた。
それから、春江と庄次郎はよく湖で会うようになった。
湖を黙って見つめ、二人で物思いにふけった。
時には、庄次郎が日本はこうあるべきだと国の在り方を語り、いかに今の日本が混乱し、それに乗じて私腹を肥やそうとしている輩が多いのか弁を奮った。
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