栗原 誠という男。

4/11
前へ
/79ページ
次へ
でも、この日は。 24日だけは、どうしてもダメなんだ。 「あの……」 だからあたしは、せめて誠心誠意謝ろうと口を開きかけた。 「あれ?桃瀬さん、都合悪いんですか?」 するといきなり男の人の声が、あたしと梨じぃの間に割って入った。 次いでふわりと漂う、清涼感のある香り。 「おぉ、栗原くんか。わざわざ来て貰って悪いね。ちょうど今、桃瀬くんに話していた所なんだよ」 梨じぃがそう言いながら、あたしの隣に目線を送る。 く り は ら く ん。 いやまさかそんな、主任自ら来るなんて事……でも、うちの会社には他に『栗原』っていないし。 「困ったな。うちの女子だけじゃ手が足りなくて、それで梨本課長に応援をお願いしたんだけど……」 どうしても、駄目かな? 請うような声音に、あたしはギギギ、と音がしそうな動きで、首を横に向けた。 「……………………………………」 「桃瀬さん?」 ……ひゅっ。 栗原さんに間近く顔を覗かれて、無意識の内に止めていた呼吸が再開する。 うーわー、噂に違わぬイケメン。近くで見ると破壊力ハンパないわー。  
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加