栗原 誠という男。

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  「どうぞ、入って」 そう言って連れて来られたのは、第一会議室。 あれ?企画部じゃないの?とは思ったけど、ドアを押さえてくれている栗原さんの脇をすり抜けて室内に入る。 「コーヒー飲む?」 「あ、あたしやります」 「いいからいいから、座ってて」 代わろうとするあたしを手で制して、手際よくコーヒーを淹れる栗原さん。 「どうぞ?」 差し出されたカップから立ち上るコーヒーの芳しい香りが、鼻をくすぐる。 「わ、美味しい……」 お礼を言って焦げ茶色の液体をひと口含むと、思わずそんな感想が出た。 「そう?良かった」 栗原さんは微笑んであたしの斜め前の椅子に座り、自分の分のカップを傾ける。 「はい。あたし、実はコーヒー苦手なんですけど……栗原さん淹れるのお上手なんですね」 「ありがとう。じゃあ、普段は何を飲んでるの?」 「ミルクティーですかね。お茶とか飲む事もあるけど、大抵それです」 「そうなんだ」 はい、と相槌を打った所でハタと気付く。 いけない、まったりしちゃった。 「それで、栗原さん。あたしは何をしたらいいですか?」  
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