北風とサンタ。

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  「♪じんぐるべ~る   じんぐるべ~る   すずが~なる~   きょお~は~たのしい~   くりすます~……へい」 あたしは歩きながら歌を口ずさんでいた。 小さい頃よく歌っていた、クリスマスの歌。 傍からすると軽快なその曲に反して、紡ぎ出されるメロディーはあまり楽しそうに聞こえないだろう。 そりゃそうだ。 だって楽しい気持ちなんて、これっぽっちも無いんだから! 「うぅ~っ、さぶっっ!!」 前から吹いてきた冷たい風に、あたしは思わず着ているコートの前を掻き合わせた。 寒い!寒い!寒すぎるぅ!! 引き結んだ唇の中で、噛み合わない奥歯がガチガチと音を発てる。 まぁ、冬なんだから寒いのは当然なんだけど、ここ数日の冷え込みは相当なものだ。 「……雪、降るかもなぁ……」 薄墨を刷いたような空を見上げて呟けば、白い息がふわりと舞って、消えた。  
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