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「いえいえそんな。あたし、てっきり栗原さんは可愛がるより虐め倒すタイプなんだとばかり……あ」
ヤ、ヤバイ。つい本音が。
「一一一一ほう」
その声で、ストン、と体感温度が2度くらい下がった気が、した。
「え……えへ?」
あたしは引き攣りながらも精一杯の笑顔を作る。
「つまり、桃瀬は俺をそういう目で見てたんだな?よーく分かった」
栗原さんは静かに静かにそう言って、唇の端を吊り上げた。
ぎゃあああああぁぁーっ!!あたしの馬鹿ーっ!墓穴掘ってどうすんのよーっっ!!
絶対零度のその笑みに、あたしは心の底から震え上がる。
「一一まあいい。その事については後でじっくりたっぷり話し合うとして、だ」
とりあえず来い。
瞬時に笑みを消した栗原さんは、顎先だけであたしに付いて来るよう示す。
それはそれは尊大な態度で、普通なら「何様だ!」とでも言ってやりたい所なんだろうけど。
有無を言わせない雰囲気のそれに、ビビリのあたしが異を唱えるなんて事、出来るはずもないワケで。
コートの裾を翻して歩きだした栗原さんの後に、すごすごと続くのだった。
うぅう。何でこの人、こんなに怖いんだよぉ……。
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