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栗原 誠(28歳、独身)は、あたしの勤める会社の企画部の主任だ。
すらりと高い身長、センスのいいスーツ。そしてそれが厭味なく似合ってしまう、涼やかな顔立ち。
さらにモテ要素(?)である、眼鏡のオプションまで付いている。
しかしあれだね、『天は二物を与えず』ってのは嘘だね。
だって栗原さんって、難しい仕事を成功させる手腕もしっかり持ってるんだもん。
仕事もデキてビジュアルもいい一一だなんて、それこそ周囲からやっかまれそうなものだけれど、世間の波を泳ぐのも上手いらしく、上司からの覚えも、同僚からの評判もすこぶる良い。
つまり、将来有望な出世株というやつ。
ゆえに、モテる。
社内のフリーの女子の大半が、彼の恋人の座を虎視眈々と狙っているというのも、あながちデマじゃないんだろう。
え?あたし?
あたしは栗原さんと働いてるフロアが違うから、彼とは接点が殆ど無い。
そりゃ、たまに姿を見かける事はあるから、その度に「眼福眼福♪」なんて思ったりはしてたけど。
そもそもね。
地味~な一般女子社員のあたしと、社内のエース的立場の栗原さん。
恋愛に発展する可能性なんて、あるわけないじゃない?
どこかの携帯小説じゃあるまいし。
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