栗原 誠という男。

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で、そんな栗原さんと接点の殆ど無いあたしが、何で一緒に仕事をしているかと言うと。 話は、少し前まで遡る。 「桃瀬くん。ちょっといいかな」 クリスマスまで2週間となった朝。 上司である梨本課長(あたしは密かに梨じぃと呼んでいる)が、あたしを自分のデスクに呼んだ。 「はい、何でしょう?」 「きみ、24日は空いてるかね?」 「24日……ですか?」 「うん。企画部の方からイベントの応援要請があってね、君に行って貰いたいんだが……」 ええー。24日って会社休みじゃない。 それに、その日は…… あたしは頭を下げた。 「申し訳ありません。その日は外せない予定が入ってまして……」 それを聞いた梨じぃは、目に見えてがっかりしてる。 「そうかぁー、駄目かぁー。困ったなぁ」 うっ。 「是非とも君に行って欲しかったんだが……そうかぁー、駄目なのかぁー」 殊更大きなため息が落ちた。 チクチクチクチク。 良心が痛む。 梨じぃには入社当初からお世話になってるし、出来るならこんな事は言いたくない。  
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