509人が本棚に入れています
本棚に追加
左端に居る少女は小柄で黒髪のショートカット。肌は不健康そうにやや青白かった。しかし、そんな彼女の特徴で際立っていたものが彼女の瞳である。
どこまでも広がっているような黒い闇。果てしなく続く闇が広がっているようで見つめ続けると吸い込まれてしまいそうな感覚にさえ陥った。
続いて右端を歩く少女はとても小柄で長い緑髪をツインテールに結び楽しそうに弾むように歩いていた。
やや紅潮したその頬。やや上がっている口角からは彼女の人懐っこさが伺えた。
その中心を歩くのが、昨晩彼に詰め寄ったあの少女である。
綺麗で薄紫色の長い髪を黄色のリボンでポニーテールに纏め上げ、機嫌が悪いのかややつり上がった眉、口はへの字に結びながら歩くその姿はどこか気品があり目を奪われてしまうほど美しかった。
「お前ら転校初日から遅刻…」
先生の一喝する声が途切れる。
「あ! マリカちゃんいたよ!」
緑髪の少女が嬉しそうにあきらを指さした。どうやらポニーテールの少女はマリカという名前らしい。
その少女は走り出し突然彼の腰にしがみつく。
「お兄ちゃん! ボクだよ! ミント! 教室を何周巡ってもお兄ちゃんがいないからずっと回ってあっ! 昨日はご挨拶出来なかったからボク…」
ミントと名乗る少女の後を着いてきていた少女は、吸い込まれそうな黒い瞳でじっと見つめ一言。
「ユア」
と名乗った。
しかしそれを合図に再び、あきらを頭痛が襲い始めた。
あたまが…いたい。
ものすごい痛みと叫び声にも似たノイズが彼を殴るように襲う。
「それとね! ボク…あれ? お兄ちゃん?」
「どうしたの!? ルシア!」
異変にいち早く気づいたポニーテールの少女が駆け寄る。
「くるな…」
頭を抑えながらあきらは一歩、更に一歩後退する。
「やめろ!!」
そう叫んだ瞬間彼は力なくその場に崩れ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!