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「無理。私とは段違い」
「そんな…お兄ちゃん」
「わかったことが幾つかある」
「何なの? ユア?」
「一つはこの術式はこっちの世界で行われている」
「もう一つは記憶が漏れた際の対応の早さ」
「対応? 漏れるってどういう事なの? ユアちゃん」
「記憶が一番戻りやすいのが夢。記憶が夢に現れる。それが漏れるということ」
「今見た結果では、夢が漏れ、記憶を再び取り戻さないように早急にロックをかけている」
「つまり術者は身近にいるってことね」
「そう」
ユアは静かに頷く。
「それと何かのきっかけで戻るように術式が組まれている」
「戻るように!? どうやるの!? それは!?」
「わからない」
再び身を乗り出したマリカだったが、ユアの返事に力なく椅子に腰を落とした。
「この術式。記憶の操作は超高難度。私の一族と一部の者のみが使えるもの」
「一族が滅んだ今使えるものは激減しているはず」
ミントとマリカは黙り込んだ。
「とりあえず私達を拒絶することはないように修正した」
「ありがと…」
マリカは力なく俯く。
ようやくやっと見つけたのに。こんなことって…。
「引き上げるべき」
「え?」
ユアの突然の予想もしてない発言に二人は驚いた。
「今の彼はあまりに無力。族長の計画は見直す必要がある。村に帰還して対策を練るべき」
「そんなのダメよ! ルシアが居なきゃ! ルシアが」
「それにユアちゃんはそれでいいの!? お兄ちゃんは仲間じゃないの!?」
「でもその仲間を置いて彼は出て行ったのも事実」
「そうだけど何かきっと理由があったんだよリムルちゃんだってきっと…」
立ち上がって必死に抗議したマリカとミントだったがユアに言い負かされて再び腰を下ろした。
「とにかく計画実行まで時間があるし、もう少し様子をみるわ」
「あと、ここではあたし達は普通の人間、そして極力刺激を与えないようにする。ルシアのためにも」
「わかった」
「うん。わかったよ」
マリカのその言葉にユアとミントは静かに頷いた。
「パトラッシュ!! ダメだ!」
沈黙を破るように叫びながら掛け布団を豪快に剥いであきらは上半身を起こした。
「これ…記憶が漏れるってこと?」
「わからない」
呆れたようにマリカはユアに訪ね、彼女は静かに首を振った。
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