第三章 始まりの夜、終わりの朝

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「教えてあげようか?」 シータの思考の問いに対し、目前のエルフェントが答えを提示しようとする。そんなエルフェントの言葉にシータは驚きの色を隠せず、目を見開く。 「なっ!?」 「私の思考がわかるのか? でしょ?」 「……っ!!」 シータの思考を先読みして、口にするエルフェント。  実際、エルフェントは相手の思考が読める類の能力は持ち合わせていない。しかし、だからと言って全く相手の思考が読めないと言われれば話は別である。簡単な、至極簡単な読心術だ。いや、むしろシータは普段から表情を殺している分、自らの想定外の出来事が生じた場合、その驚きや思考が表情に出やすい。    鼠の時にしたってそうだ。普段は物静かな口調で喋る彼女が、突如声を張り上げる。    更には、エルシオンの調査の成果をマイケルに伝える時ですら、嫌な事を思い出しただけでその額に血管を浮き上がらせていた。    普段殺している表情が、感情が、今はとてもわかりやすく見て判る。  しかし、そんな自身の思考と感情が表情に出ていると気付かないシータはエルフェントが読心術、即ち、思考を読み取る能力を兼ね備えていると判断する。  思考を読み取る……そんな相手に私は勝てるのか、とシータは考える。  その考えと相まって、上目遣いでシータを見つめるエルフェントと視線を合わせると、更なる悪寒を感じ、更なる恐怖がその表情に出てしまった。
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