第三章 始まりの夜、終わりの朝

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「解り易いわね……あなた」 エルフェントはシータを窘(たしな)める様に言う。 「本当に解り易いのね……。怖いんでしょ? その額に浮き出た血管が何よりの証拠。だってそっくりだもの。オリウス、あいつは恐怖と焦り……後は怒りかしら……とりあえずすぐ血管を浮き立たせて感情を露にしていたわ。本当に……、解り易い」 「…………」 シータは何も答えずに呼吸を荒げている。その頬には一滴の汗が滴る。崩れた鉄仮面から見える彼女の心境は容易に見て取れる。  恐怖。  死への――恐怖。  散々他の命を奪い、そして自らの命を落とす事は恐怖した。  そんなシータに構わずエルフェントは嘆息する。 「解り易いのは好きよ。でもね……解り易過ぎるのは」 退屈しのぎにならないのよ、と静かに言う。
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