第三章 始まりの夜、終わりの朝

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 その言葉は恐怖が極限に達したシータの心を大きく揺さぶる。いや、揺さぶられてしまった。  退屈しのぎにならない、とは深読みせずともその言葉の真意は解る。  もう用済みだ、と。 殺してやる、と。  殺されるのは……嫌だ。いままで大小問わず多くの命を屠っておきながら、考えるのも調子が良いのかも知れないが、死ぬのは嫌だ。死ぬと言う事は死ぬと言う事であり、私が私で無くなるということだ。  どうせ――  どうせ殺されるなら――  シータは自らの頬を流れていた汗が顎の先端に来て、そのまま落ちたのを感じる。  それを機に、シータは動いた。 その瞬間、シータは覚悟を決めた。  エルフェントに掴まれていた右手を大きく振って払い、腹を捻ってその狙いを逸らす。そして、エルフェントから放れて自由になった右腕で、大振りで薙ぐ様に彼女の側頭部、こめかみを狙う。  人体急所の内の一つ、こめかみ。 例え神だとしても、その体は人間。  ならば人体急所への攻撃も有効だろう、とシータは考えた。いや、正確には考えていない。無意識に近い、目の前の敵を倒すために本能的に急所を狙ったにすぎない。
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