第二章 白の森

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「その涙は悔しさではないのか?」 「…………」 「何がなんだかわからない、という表情だな」  仮面の男は言う。 「いいだろう、教えてやる。私の名前は……」 「セシル」 「……ん?」 エドワードが仮面の男の前で、仮面の男を目にしてから初めて口を開いた。 「銀髪の、セシル」 「……知っていたのか」 セシルと呼ばれた仮面の男は静かに答えた。  その名前は昨夜のシータの話にも出てきており、エドワードも自宅のエルシオン神話でその名前を目にしていた。  銀髪のセシル。 《ヒト》に生きるための知恵や世界の広さを語った神。  エドワードもそれは知っている。  知らなかった事、シータが言っていた事が確かであればセシルは空にその姿を変えた筈だった。  しかし、目の前に人型で、人間の様な容姿でセシルは立っている。  確かめるまでもなかった。疑う余地もなかった。威厳が違う。  セシルが目の前にいるだけで、そう、まるで蛇に睨まれた蛙の様に、エドワードは身動き一つ出来なかった。
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