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「それにしても、ここは濃いな……霧が」
鬱陶しそうに言うと、セシルは右手を天高くかざして指を鳴らす。するとどうだろう。エドワードとセシルを覆っていた純白の世界はだんだんとその色を失くしていき、気付くと周囲を普通に見渡せるようになった。周囲に生い茂る白い木を見渡せる様になった。
「霧が、晴れた」
「ふ……、奴は未だに私の能力を恐れているのさ」
「奴? エルフェントのこと?」
「ああ、そうだ」
まあ、正確には奴の残留思念といったところだが、とセシルは言い加えて微笑む。恐らくエドワードが想定していた以上に神話を知っているために説明を省く事が出来て楽なのだろう。セシルは霧が晴れた森を見渡してその力に感銘するエドワードを余所に地面に手をかざす。セシルの手に反応するかの如く地面が発光し、彼が手を引く動作に併せて地面から鞘に納まった一振りの剣が出現した。
いや、この場合は召喚したが正しいのだろうか。
「これを授ける。受け取れ、エドワード」
そう言ってセシルはエドワードに地面から取り出した剣を手渡した。鞘に納まっている為、正確な数字は判らないが、刃渡りは大よそ六十センチあるだろう。しかも、その造りは純銀の様だ。地面から取り出した割には――正確には全く違うのだが――その鞘も柄も一点の曇りもなく、煌き、輝いている。純銀の重量感に加え、剣から放たれている聖なる気は第六感の乏しいエドワードでも感じることができた程、神々しい。
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