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「……これは?」
「聖剣ミストダイ」
セシルはエドワードの問いに端的に答える。しかし、それだけでは解答として不十分だと感じたのか、すぐに言葉を加えた。
「私が霧のエルフェントを滅ぼすために創った剣だ」
「なんでそんなものを僕に……」
「決着は自分でつけろ。ただそれだけだ」
言うが早いか、セシルは踵を返して歩き始める。
「待って!」
エドワードの叫びに制されたのかセシルは歩みを止めて振り返る。
「……決着って?」
「…………」
セシルはエドワードの問いに少しの間沈黙して言葉を選び、言う。
「今はお前の父親の元へ向かえ」
そうすれば自ずと解るだろう、とセシルは言いながら地面を勢い良く蹴って空高くへと跳んで、飛んで行った。
「ま、待って! まだ……」
エドワードは叫ぶが、既にセシルの姿は見えない。これ以上叫んでも無意味なことを悟り、彼は言葉を続けなかった。
空を見上げていた顔を伏せ、地面を数秒間見つめて考えを整理する。歯を食い縛り、拳を握り、己の葛藤と戦うかの如くエドワードは力いっぱい目を瞑る。
そして、目を見開いた。
開かれたエドワードの目は先程までと、エルが倒れた時と、父親と対峙した時と、銀髪のセシルを見かけた時と、それら全てと違う。最初にエルをエルシオンに誘った時と同じ、意を決した眼をしている。
「いこう。父さんの元に」
エドワードは手に持った剣を見つめ、背負い、走り出した。
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