第二章 白の森

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《白の森》を抜けると後は簡単な道だった。《白の森》とは違い、人が通れる道があったからだ。獣道のようであるが、まがりなりにも道は道だ。ディーンが鉈を使って草木を掻き分ける必要がないほど既に草木が掻き分けられた道だった。  その道をディーン、フランツ、ショウと他四名の町人は歩いて行く。 「おっし、山頂が見えたぞ!」  ディーンの直ぐ後ろを歩いていた葉巻の町人が頂を目にするなり指を刺して声に出す。 「俺が一番乗りだ!!」 「あ、待て! 俺が先だ!」 ショウを含めた若い町人たちは山頂が見えるや否や、葉巻の町人に反応する様に走り出す。山頂は逃げたりしないのに、誰が一番だとか順位を争うものでもないのに、何より先程まで疲弊していたはずなのに、若い町人達は急に元気を取り戻した様に我先にと駆け足する。エル背負ったフランツとディーンは口を開けて若い町人達の元気の良い光景を眺めていた。 「ははは……、若いというのはいいものですな。先程までの疲労をすっかり忘れてしまっている様ですな」 若い町人たちと走らなかった顎鬚(あごひげ)を蓄えた中年の町人が二人に話しかけてくる。 「ですな」 ディーンは苦笑しながら言う。フランツも力なく笑う。 「おぶりますよ、エル嬢」 唐突に顎鬚の町人が言い、フランツは目を向ける。 「白の森からずっと背負っているじゃないですか。少しぐらい、私もお役に立ちたいですからね」 「……すまない、お願いしていいかい?」 フランツは少し躊躇した後、顎鬚の町人にエルを背負いなおしてもらった。町人はエルをおぶさると「お任せください」と、力強く言って山頂を目指して歩いて行った。フランツは少し疲れた表情で顎鬚の町人に背負われたエルの後姿を見送る。
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