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「大丈夫ですか?」
ディーンはフランツの表情から疲労を読み取って心配そうに声を掛ける。
「ええ……大丈夫ですよ」
フランツはそう答えるが表情が大丈夫という顔をしていなかった。ディーンはそんなフランツを見て、肩膝をつき、背中をフランツに向けた。
「乗ってください。背負いますから」
「そんな……」
フランツは目を丸くして言う。
「そんな事をしたら、今度はロイズさんが疲れてしまいますよ」
「ははっ! 私は体育の教師ですぞ! 体力には自信があります」
ディーンは言いながら袖をまくって自らの筋肉を見せ付ける。筋骨隆々とまではいかないものの、年齢に相応しくない、普遍的な一般人よりは鍛えられている二の腕だった。
「……では、甘えておきますか」
フランツはそう言うとディーンの背中に体重を預けた。ディーンは背中にフランツの体重を感じると、まるでその重さを感じない様に、自然に立ち上がる。
「では、我々も行きますか」
ディーンは山頂を目指して歩き始めた。
「……実は、エルは私の実の娘ではないのですよ」
「えっ…?」
ディーンに背負われているフランツが唐突にそんなことを言う。あまりにも突然の、突拍子もないフランツの告白にディーンは思考が回らず、理解できなかった。
「エルは、あの子はあの森で拾ったんですよ」
「あの森?」
「ええ、《白の森》です。その中央付近に裸で捨てられていたんですよ……あの子は」
ディーンは何も言わずにフランツの言葉に耳を傾ける。
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