第二章 白の森

30/45
前へ
/152ページ
次へ
「大丈夫ですか?」 ディーンはフランツの表情から疲労を読み取って心配そうに声を掛ける。 「ええ……大丈夫ですよ」 フランツはそう答えるが表情が大丈夫という顔をしていなかった。ディーンはそんなフランツを見て、肩膝をつき、背中をフランツに向けた。 「乗ってください。背負いますから」 「そんな……」  フランツは目を丸くして言う。 「そんな事をしたら、今度はロイズさんが疲れてしまいますよ」 「ははっ! 私は体育の教師ですぞ! 体力には自信があります」  ディーンは言いながら袖をまくって自らの筋肉を見せ付ける。筋骨隆々とまではいかないものの、年齢に相応しくない、普遍的な一般人よりは鍛えられている二の腕だった。 「……では、甘えておきますか」 フランツはそう言うとディーンの背中に体重を預けた。ディーンは背中にフランツの体重を感じると、まるでその重さを感じない様に、自然に立ち上がる。 「では、我々も行きますか」  ディーンは山頂を目指して歩き始めた。 「……実は、エルは私の実の娘ではないのですよ」 「えっ…?」 ディーンに背負われているフランツが唐突にそんなことを言う。あまりにも突然の、突拍子もないフランツの告白にディーンは思考が回らず、理解できなかった。 「エルは、あの子はあの森で拾ったんですよ」 「あの森?」 「ええ、《白の森》です。その中央付近に裸で捨てられていたんですよ……あの子は」 ディーンは何も言わずにフランツの言葉に耳を傾ける。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加