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「ええ、確かデトランドという方達でした。マイケルというお子さんもいました。実に暖かい、普通の家族でした。私はそれまで山に住んでいる人間はどこか変わり者で、世間離れした人なのだと偏見を抱いていましたからね、その固定概念を見事に覆すほど、普通の、ごく一般的なご家庭でした。私はそこで一晩泊めて頂き、夜明けにジバラードへ戻りました。家を出るときはマイケル君しかおらず、デトランド夫妻がいなかったのが残念でした……。お礼を言いそびれました……」
「……でもマイケル君にはお礼を言ったのでしょう?」
「ええ、言いました。私とあの子の分も……。お父さんとお母さんによろしく、と」
フランツは言うと目を瞑り、過去話に一区切りをつけた。
「後は……、後はロイズさんの知る通りです。私に財力がないばかりにあの子を学校に行かせることもできなかった……。ロイズさん、あなたには本当に感謝してします。……ありがとう」
「よしてください、照れます」
ディーンは少し迷惑そうに、少し嬉しそうに表情を緩める。
「私は当然の事をした、それだけですよ」
「当然の事……?」
「全ての子供は学ぶ権利がある。私は……そう考えています」
「ロイズさん」
フランツはディーンの言った言葉に感動した。それは彼にとって涙を流す程の感動に値するものであった。
「さ、早く行きましょう。みんなが待っている」
言うが早いか、ディーンは足を速める。
そんな二人の背中を微かに見える夕陽が照らしていた。
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