第二章 白の森

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 マイケルが叫んだ途端、彼の後ろの草木が萎れていった。まるで水分を奪われていったかの様に。砂漠に植え替えられて栄養分がなくなって死んでいく草木の様に。それが一瞬で、まさに瞬く間に起きた。  萎れた。  萎れて、朽ちた。  その光景にエドワードは目を丸くし、マイケルはそんなエドワードの変化に気付き、後ろを振り返る。 「あ……、あ……」 マイケルは怯えた表情で、エドワードは困惑した表情で萎れた草木の先を見ていた。  くしゃ……くしゃ……と萎れた草木を踏みつけながら白いワンピースに赤いマント、赤い頭巾をかぶった色白い女性がでてきた。透き通る様に白い肌。鉄仮面の様に無表情。緋色の目は全てを見据えるように大きく、冷たい眼。赤い頭巾から漏れている白銀の髪は森に微かに入ってくる月明かりを反射させて輝いている。 「ミック、誰? その子は」 鋭い眼光がエドワードに向けられる。  この声、間違いない、とエドワードは確信する。 今二人の目の前にいる、萎れた草木の上に端然としているこの女性。この女性こそがマイケルの姉、シータだ、と。 「この子は……この間知り合ったんだ。森で迷っていたから道を教えたんだよ」  マイケルはシータの問いにおどおどしながらもしっかり答える。シータは無言でマイケルとエドワードを交互に見る。その瞳はどこまでも深く、マイケルの真意を探っている様であったが、何かを感じ取ったのだろう、エドワードと目が合った途端、ゆっくりとエドワードに歩み寄ってきた。 「ミック、どいて」 言いながらマイケルの体を横へ押しのけて、エドワードの顔へ自分の顔を近づけた。
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