第二章 白の森

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 エドワードは軽く首を反らせようと、逃げようとする。しかし、シータが既にエドワードの後頭部へと手を回していたのでそれは叶わず、エドワードは目を丸くして、ただ恐怖で歯を食い縛っていた。シータはそんなエドワードに構うことなくエドワードの唇へと顔を近づける 「この臭い……やはり、エルフェント……」 「エルフェント……?」  エドワードは初めて口を開いた。意識してではなく、無意識で。  エルシオン神話に出てくる神々の一人。美の神エルフェント。 何故その名前が出てくるのだろうと、エドワードは疑問に思ったが、それを口にする前にシータは言う。 「お前が原因か……」 途端、シータの声色が変わる。それはあの時、デトランド邸でねずみを見つけた時に放った言葉のそれと同じであった。  戦慄。  シータはエドワードと視線を合わせて睨む。その緋色の瞳は見ていると吸い込まれてしまいそうになる程、色濃い。いや、実際にそうだった。デトランド邸でのねずみの件。あれは、これだった。これが原因でねずみは死んだのだ、とエドワードは直感する。
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