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ディーンはただその場に倒れていた。
ディーンは何が起きたのか解らなかった。
フランツの声が聞こえ、燃える音と臭いを感じ、ディーンは伏せたまま顔を上げた。
在り得ない、とディーンは思った。
彼の目の前ではエルが、その線の細い華奢な体には到底不可能であろう事を、葉巻を加えていた町人の首根っこを掴み持ち上げていた。当然の如く、身長差があるので町人は膝立ちをしている様な体勢ではあったものの十を過ぎて間もない子供が、ましてや病気でふせていた少女が片手で大の大人の上半身を持ち上げるなんて事はありえないだろう。ディーン自身も在り得ない光景だと、信じられない光景だと我が目を疑いながら視界に捉えていた。
何があったというのか、あの時に。
あの時。
エルが目を覚ましたあの時。
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