第二章 白の森

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「醜い……醜い……。せめて、美の炎で美しく消えよ」 エルは数秒前までフランツだった人型の黒炭に向けて言い放つ。  エルは周囲を見渡し、自分から一番近くに倒れている葉巻の町人(と言っても爆風で吹き飛ばされた際に葉巻はどこかに飛んで行ってしまったので、葉巻はくわえていない)に歩み寄った。そして、その顔を見ると、 「ほう……」 と、感心する様に声を漏らす。 「貴様、なかなか美しい顔をしているではないか。燃やすには惜しい。私の糧となれ」  そして先程の場面に戻る。  首を掴まれて無理矢理持ち上げられた葉巻の町人は足をばたつかせて逃れようと努力する。手は自分の首を押さえているエルの手を引き剥がすように暴れ、時折その手を引っ掻いた。口をぱくぱくと開閉させるが、声が出ていないので、助けを求めているのか許しを請いているのかもわからない。そんな葉巻の町人の空しい抵抗も数秒経ったのち、終わった。  止まった。  エルが手を放すと、葉巻の町人はその場に崩れた。  脱力して。  死んだ様に。  殺した、とディーンは直感して目を丸くした。  葉巻の町人は絞め殺されたわけではない。  しかし、死んだ。  殺された。  死という本能的に抗いたい運命の顛末が、目には見えないそれが、確かに葉巻の町人の体を取り囲み、渦巻いていた。
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