第三章 始まりの夜、終わりの朝

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「それからだよ、姉ちゃんが変になっていったのは。毎晩毎晩夢に出てくるんだって、エルフェントの姿とその復活によって滅びた世界が……まだ復活もしていないのに、まだ滅びてもいないのに、まるで目の前でそれが起きているかの様に。だから、姉ちゃんは時々寝ながら苦しんでいた。叫んでいた。俺や父さんや母さんは知っていたからいいけど、他人には聞かれたくないから、他人を家に泊まらせることを拒むんだ。当たり前と言えば当たり前だよね。毎晩の様にうなされている自分の羞恥を家族以外の誰にも知られたくないって思うのは」 「…………」  エドワードは何も言わない。そんな彼に構わずマイケルは話を続ける。 「そんなこともあるんだけど……十二年前、妙に頭痛のする日に俺の家に一人の商人が一晩泊めて欲しいと訪ねてきたんだ、腕に幼子を抱えてさ。父さんも母さんも快くその商人を迎え入れた。姉ちゃんは今日帰ってこない予定だったから大丈夫だろうって。俺はその時頭痛がひどかったから居間のソファで寝ていたから詳しい経緯は知らないけど、気付くと玄関で姉ちゃんと父さんと母さんが口論していたんだ。そして口論の末、姉ちゃんは、姉ちゃんは……」  父さんと母さんを燃やした……睨んで、灰にした、とマイケルは苦しみに耐えるように言う。  エドワードは驚いて立ち止まり、マイケルの方へ振り返った。 「それ……本当か?」 「ああ……本当さ。今でも覚えているよ。父さんと母さんの悲痛な叫び声は忘れようとしても忘れる事はできないんだ」  マイケルは嘆息する。
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