第三章 始まりの夜、終わりの朝

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「……姉ちゃんはその後、父さんと母さんの死体を玄関の横に放置して、何かに録りつかれた様に取り憑かれた様にどこかに歩いて行ったんだ。……朝、泊めた商人は俺に言ったよ――泊めてくれてありがとう。お父さんとお母さんにも伝えておいて下さい――ってな。父さんも母さんもすぐ隣にいたのにさ……俺は何も言わずに頷いといたよ。……そして気付いたんだ。商人が遠ざかっていくほど頭痛が引いてくんだ。その時はよく解らなかったけど、後々になって姉ちゃんが言うには商人の抱えていた幼子がエルフェントの魔力を帯びていたらしい」  エルフェントの魔力。    果たして神の持つ力の象徴を魔力などと言い方をしてもいいのだろうか、とエドワードは考えるが、言葉にしたのは別の疑問だった。 「マイケル、お前は……いったい何歳なんだ?」 それは以前より疑問にしていた事だ。  マイケルは出合った当初からエルを《嬢ちゃん》と呼んでいた。見た目、外見上は自分より、エルより年下なのにその物言いはあたかも自分が年上であると確信をしている様子だった。外見とは裏腹な年齢。そんな人間は少なくはない。しかし、歳相応に見えなくとも、それなりに近い年齢に見えるものだ。十代の青年が老人に見える事は無いだろうし、二十歳を過ぎれば人間誰しも(特に男性は声変わりで)大人として捉えられ、それ以下に見られる事は稀だ。しかし、先程マイケルは言ったのだ。十八年前にオリウスに助けられた、と。どんなに見ても、どんなに声を聞いても、彼のそれは二十歳以下に感じられる。先程述べた通り、どう見てもエルより年下、十二歳以下だ
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